Tokyo cafe review 02_自家焙煎珈琲 haze

多様な映画のジャンルの中に、“二人組の男の友情もの”とでも呼ぶべき一群の作品があります。「夜の大走査線」(1967年・米)、「イージーライダー」(1969年・米)、「真夜中のカウボーイ」(1969年・米)、「スケアクロウ」(1973年・米)…といった作品を挙げていけばどういうものかお分かりいただけると思います。この中からアメリカンニューシネマ最強の二人組を選ぶとすれば、「明日に向かって撃て」(1969年・米)と「スティング」(1973年・米)の二本で、全く異なる役柄ながら二人組の男の友情を演じ切ったたポール・ニューマンとロバート・レッドフォードに止めを差して良いでしょう。二人には、ユーモアとペーソスとをない交ぜにした確固としたスタイルが、それぞれの作品で感じられます。なんというか、風が吹いているんですね。

ということで前振りが長くなりましたが、今回ご紹介する自家焙煎珈琲「haze」は、そんな映画の風景にもぴったり納まってしまいそうな雰囲気を漂わせる、男性二人組。当然、そこには、二人組独特の風が吹いています。

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「haze」のシンボルマーク

「haze」の焙煎は、お店のシンボルマークにも使われている500gのサンプルロースターを用いて行われます。工程はすべて手作業で、それだけに繊細な気遣いが必要とされ、出来上がった豆には、手仕事の喜びと誇りが込められています。メニューは、生豆の種類に合わせて浅煎りから深煎りまでバラエティに富んだラインナップが揃っていますが、私は、以前購入した「ニカラグア」を今回も試してみました。やや浅煎りの豆ですが、水分が抜けきって良く膨らみ、ごく軽い酸味と香りが、深煎りに馴れた私には新鮮でした。同時に購入したマンデリンも、深煎りのしっかりした味をだしていました。

ところで、私が「haze」を知るきっかけになったのは、一年ほど前、知り合いが神楽坂の出店先で偶然豆を購入したことですが、以前の場所を移られたお二人を、今回改めて発見できたのも偶然でした。出会いというものは不思議です。(神楽坂フラスコ_” 書楽家 安田有吾 作品展 “に「haze」も出店していたところを偶然に発見。)

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神楽坂フラスコ前での珈琲の販売

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会場内で珈琲を淹れる「haze」のお二人

お二人は現在、早稲田鶴巻町をベースに東京23区の職場や自宅への豆の配達、地域イベントへの参加などを中心に活動されていますが、配達も含め移動の基本は自転車。そのストイックな姿勢には、やはり独特の強いこだわりを感じます。お二人は、以前勤めていた珈琲関係の店を同時に辞めて「haze」を立ち上げたそうですが、ゆくゆくは店舗を持つことも視野にいれながら、既に3年ほどこの形でお店を続けていているそうです。バブルと飽食の時代が過ぎて、今また新しい風が吹き始めているのかもしれません。

早稲田鶴巻町のベース基地

早稲田鶴巻町のベース基地

ベース基地内部の風景

ベース基地内部の風景

店を出て、早稲田鶴巻町から高田馬場に向かって歩いて行くと、名画座ファンにはお馴染みの「早稲田松竹」が悠然と姿を現します。折しもこの記事を書いた二週間前に掲げられていたのは、二人組の男の友情ならぬ大勢の男達の意地と壮絶なガンファイトが炸裂する「リオブラボー」と「ワイルドバンチ」の二本立て。映画ファンならずとも涎のでそうなラインナップですが、こんなものを見せられた日には、やはり熱い珈琲が欲しくなるものです。

coffee break_知り合いの4人展に乱入

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先日(9/17〜9/22)吉祥寺の「gallery re:tail(ギャラリー リテイル)」で開催されていた4人展の会場で、タイムレスの珈琲を試飲していただく機会がありました。知り合いとはいえ、突然の申し出を快諾してくれた4人に感謝!です。

豆の手配の関係もあり、21日(Sun.)のみの試みでしたが、バックヤードの完備していない場でしたので、準備から提供するまでの各工程で、色々と勉強になることばかりでした。タイムレスで提供する場合はネルのドリップですが、今回の抽出担当は私でしたので、色々と迷った末に、コーノ式のドリッパーを用いたペーパードリップで抽出を行いました。(汗) 試飲なのでお金をいただいているわけではありませんが、やはりそこは何かと緊張するもので、上手く淹れることができたかどうか非常に不安でした。

幸い、飲んでいただいた方にはおおむね好評だったのですが、ペーパードリップの場合、ネルと比べるとややあっさりした口当たりになります。そこを物足りないと感じるか、さっぱりして好きだと感じるかは人それぞれのようです。お店で提供するように安定した味が出せる訳ではありませんが、機会があれば、このような試みもやっていければと思っています。

4人展はそれぞれ経歴も作風も違う4人が、それぞれの作品を展示。空間の良さも相俟って、とても気持ちの良い展示会でした。次回は、こちらももう少しきちんと準備して参加させていただければと思います。ともあれ、皆様お疲れ様でした!

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※森脇芳郎・柳瀬風也・五藤雄三・管広各氏の作品(左上から時計回り)

Tokyo cafe review 01_ねじまき雲(陽)

中央線国分寺駅の南、長い坂を下ったところに佇む小さな店の扉を開くと、不思議な空間が現れます。扉1枚で隔てられただけなのに、そこは、外の世界とは全く異なる空気に満たされています。満たされているのに、苦しくはありません。あたたかく静かで、時がゆっくりと渦を巻いています。ここが、今回ご紹介する「ねじまき雲(陽)」です。

「ねじまき雲(陽)」のメニューは、とても刺激的です。手作りの本のようなメニューのページをめくると、「甘渦(あまうず)」「旋風(つむじ)」「一閃(いっせん)」といった、イマジネーション溢れる文字が目に飛び込んできます。メニューに添えられた説明を読んでいくだけでも、時間を忘れさせてくれます。

自家焙煎の豆を用いた珈琲は、カリタやコーノ式のドリッパーを用いたペーパードリップ、フレンチプレス、サイフォンなど、メニュー毎に異なる抽出器具で提供されます。中でも特筆すべきは、パヴォーニのレバーピストン式マシンで提供されるエスプレッソでしょうか。全自動のエスプレッソマシンとは違った、手動式ならではの独特の味わいが楽しめます。最初にこのエスプレッソを飲んだときに、初期の「タイムレス」のメニューを飾ったエスプレッソの味を思い出して、懐かしい気持ちになりました。

私が好んで注文するのは、コーノ式のドリッパーで抽出した「旋風(つむじ)」というブレンドです。切れの良い苦みとコクが心を落ち着かせてくれます。何もしないで、ただコーヒーをのむだけの時間を楽しむことができます。

ところが、ここにも、時として激しい渦が巻き起こることがあります。例えば、「滴(しずく)」と名付けられた水出しコーヒー。通常の「水出し」の優しいイメージとは異なる濃厚で凝縮されたエキスのような味わいは、心をざわつかせ、異界へと連れ去られて行くようなインパクトに満ちています。ここは、深煎りのオーソドックスな味を基本にしながら、さまざまな味のバリエーションを追求するラディカルな実験場でもあるのです。

唐突ですが、この水出しコーヒーのことを考えていたら、連想の果てにガルシア・マルケスの短編を映画化した「エレンディラ」(1983年・仏/メキシコ/西独)の画面が浮かんできました。鮮烈な映像と祖母を演じたイレーネ・パパスの怪演が今なお印象的ですが、あの砂漠の豪奢な天幕の中で、イレーネ・パパスが飲むのにふさわしいコーヒーは、この水出しコーヒー以外にないのでは?…そんな益体もない妄想に心ゆくまで耽ることができるのも、このお店ならではの良さかもしれません。

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※店主はとても気さくな方ですが、他人との会話を楽しむための空間ではないので、できればお一人で行かれることをオススメします。記事中の「水出しコーヒー」は、品切れの場合もあるそうです。